美容師の残業代がでない!労働環境の改善や勤務時間・美容師には労働基準法はない?
「ろくに休憩ない美容師は残業代ももらえないもの…?」
「10時間労働でも残業代は出なくて当然…?」
「サービス残業が多いから疲弊する一方、残業代がでないのはツライ…」
このように、美容師の残業代についてお困りの方は、労働基準法をもとにした下記の内容を参考にして解決策を探っていきましょう。
- 残業代は1日8時間・週40時間以上の労働で発生する
- 残業の上限は月45時間
- 残業代を請求できる・できないケース
- 残業代の請求方法
- 労働環境の改善策
もちろん、美容師にだって「労働基準法」は適用されます。
もしも未払いの残業代を請求したい場合、残業時間はタイムカードなどの履歴できっちり管理しておくことが大切。
サロン側では、後でまとめて未払い残業代を支払うことにならないよう、日頃からスタッフとの間で明確な勤怠管理がなされているよう努めなければなりません。
この記事を書いた人
ナチュラルな大人可愛いから今時の可愛いまで、お客様に合わせたヘアデザインをご提案させて頂きます。
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【残業代が出る基準】労働基準法の規定
「残業」という時間外労働が発生した場合、サロンオーナーは従業員である美容師へ「残業代」を支払わなければなりません。
1日8時間・週40時間以上で残業代が発生する
労働基準法では職種に関わらず、勤務時間は「1日8時間、週40時間まで」という基準を設けています。
第三十二条
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:労働基準法
よって、超過した労働時間においては残業とみなし、別途給与となる「残業代の支払い」が必要となります。
残業の上限は月45時間
労働基準法では時間外労働(残業)の上限が、月45時間・年360時間と制限されています。
従業員に時間外労働・休日労働をさせる場合は、「36協定」の締結・届出が必要となります。
36(サブロク)協定とは
労働基準法36条に基づく労使協定。
企業が法定労働時間を超えて労働(残業)を命じる場合に必要となる。
参考:時間外労働の上限規制
【雇用形態別】残業代を請求できる・できないケース
通常、会社や上司の指示のもと時間外労働をした場合であれば、残業代が発生します。
それは、明示ではない黙示の指示である場合も対象です。
例えば、美容師の残業として多いのは閉店後の「カット練習」「清掃」「備品の発注・管理」なども、閉店後の時間外労働が慣習化されている、練習を断ることが難しいといった状況にあれば、残業とみなされるのが前提。
その他にも雇用形態によって残業代が請求できるケースとそうでないケースが存在します。
請求できる場合 | 請求できない場合 |
みなし労働時間制 | 固定残業制業務委託契約 管理監督者 | 面貸し契約
請求できる場合
固定残業制
原則、想定された残業時間を超過労働した場合、その超過分については別途残業代が発生します。
みなし労働時間制
美容師は「みなし労働時間制」の条件に該当しないとされるため、雇用主が残業代の支払いを拒否する理由として認められないことから残業代を請求できる可能性が高いと言えます。
みなし労働時間制が該当する職業
- 事業場外労働
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
請求できない場合
面貸し(ミラーレンタル)契約
面貸しでは、個人事業主である美容師との間に、美容室との雇用関係がない点から美容室側に残業代の支払い義務は発生しません。
業務委託契約
業務委託契約の場合、原則として残業代を請求することはできません。
なぜなら、美容室との間に雇用契約はなく、労働力や労働時間を提供する契約内容ではないためです。
業務委託契約の特徴は「成果物」を提供することで対価を受け取るということ。
請負人が予定している時間内に仕事を完成させる必要があります。
管理監督者
労働基準法によって、「管理監督者」に該当する場合、残業代は支払われません。
では「店長」は管理監督者に該当するかというとそうとは限りません。
肩書きではなく、労働の実態から判断されます。
管理監督者の条件
- 経営者と一体的な立場で仕事をしている
- 勤務時間に裁量がある
- その地位にふさわしい待遇を受けている
また、美容師の年収については>>美容師の給料・店長やスタイリストの収入で詳しく解説しています。
未払い残業代の請求方法
未払いの残業代は以下3つの方法で請求することができます。
残業代の請求方法
- 弁護士に依頼
- 労基署に相談
- 自分で請求
残業時間を証明できる以下の書類やデータを用意しましょう。
タイムカード
出退勤時刻を記載したメモ
指名履歴
同僚の証言
弁護士に依頼
手順
- 弁護士へ相談
- 弁護士と打ち合わせ
- 労働審判期日・証人尋問期日への出頭
負担が一番少なく済むのでオススメする方法です。
費用面はかかるものの、完全成功報酬であれば、請求して支払われた金額の中から賄えます。
請求できる金額が低い場合は、避けた方がいい方法です。
労働基準監督署に相談
手順
- 労基署へ相談
- 残業代請求書作成・送付
- 調査についての打ち合わせ
- 調査・指導結果についての連絡がくる
無料でできて、自分で請求するよりもハードルが低いのが利点です。
ただ、弁護士へ依頼する場合に比べて「回収率」がやや低くなる可能性があります。
自分で請求
手順
- 通知書の送付
- 残業代の計算
- 交渉
- 労働審判申立て・期日出頭
- 訴訟提起・期日出頭
請求金額をきちんと支払ってもらうためには、サロンオーナーとの交渉が生じます。
もちろん費用はかからないものの、3つの中で一番負担が大きいのが難点です。
請求できる金額が大きいケースでは弁護士への依頼も視野に検討しましょう。
【美容師の声】労働時間や残業に関するトラブル
美容師の方で、労働時間などの待遇について、労働基準法に違反しているのでは?といった疑問を感じていたり、実際に訴える意向を発信しているケースが少なくありません。
同僚の29歳の男性・美容師(アシスタント)が精神的病から辞職後、労働基準監督署に訴えて、サロンへ今までの未払い分の残業代を請求したそうです。
だいたい9時~21時まで働いていました。
引用元:Yahoo知恵袋
うちの美容院では正社員は10時間労働で、アシスタントは30分休憩が確実に取れてますが、スタイリストはカラーリング中の15分くらいでお昼を済ませる日が多いです。
休憩時間が30分の美容室が多いと勝手に認識していますが、なぜ労働基準法が適用されないのか不思議です。訴訟してもおかしくないのでは?
引用元:Yahoo知恵袋
美容師の方に質問です。何時から何時まで働いていますか?私はアシスタントで、8時15分出勤、20時退勤です。練習があると帰宅が23時過ぎることもあります。食事休憩も10分だけでお給料が月15万程度。
これって労働基準法に違反してますよね?
引用元:Yahoo知恵袋
実際に裁判での訴訟問題は稀かもしれませんが、こういった悩みを抱えている美容師の相談を受ける法律事務所は、需要とともに増えてきています。
特に退職のタイミングで、会社に「残業代の請求」をするケースは増加傾向に見られます。
理由は、「着手金ゼロ、無料相談」などで、協力してくれる法律事務所が多いからです。
美容師の労働環境を整える改善策
美容室やサロンでの勤務時間は、労働基準法に沿った調整が不可欠です。
その一方で、人員や経営状況から実現化するのが困難である美容室やサロンが多いのは事実。
その場合は労働環境を改善することで、勤務時間を労働基準法の規定どおりに調整できるようになります。
その具体的な改善策は以下の内容です。
労働環境の改善策
- 契約内容の見直し
- 業務の効率化
契約内容の見直し
美容師の労働時間超過を避けるための方法としては、契約内容を見直すことから始める必要があります。
具体的には以下の内容が有効です。
- パート・アルバイト契約を活用する
- 業務委託・業務契約を活用する
- 福利厚生を充実させる
パートやアルバイトでの雇用形態を取り入れることで、サロン側にとっては時間帯による人員調整ができ、人件費削減が大きなメリットです。
また繁忙期などは、業務委託で短期・単発スタッフを確保する方法もあります。
一方、雇用される側としても、必要な時間を確保しながら多様な環境で経験を積みやすくなり、フリーランスとして独立できる機会が増えるといった点でメリットが生じます。
より直接的に労働環境を整えるためには「福利厚生の充実」が有効な改善策として挙げられます。
理由は、福利厚生の充実により、ワーク・ライフ・バランスが実現できることで、従業員の満足度が高まるからです。
スタッフの働く意欲が向上し、優秀な人材を集めることにもつながると考えられます。
業務の効率化
契約内容の見直しと同時に、業務の効率化を実践することで、スタッフとオーナー双方の負担を軽減させながら労働環境を整えることがより具現化できます。
実際にサロンで取り入れやすい「業務の効率化」で有効なものは、以下が挙げられます。
- ワークフローのマニュアル化
- シフト制の導入
- POSシステムの導入
開店・閉店準備や発注、管理などの毎回決まって行う作業は「マニュアル作成」することが有効です。
それは、スタッフがスムーズに作業でき、残業時間・残業代の発生を防げる点が、雇用する側・される側の両者にとって利点といえるからです。
加えて、引き継ぎの手間も省けるようになり、ミスも減らすことができるメリットもあるでしょう。
同時に「シフト制の導入」もすぐに試せるオススメの方法です。
早番・遅番などで、スタッフの残業を減らすことが実現でき、スタッフにとって働きやすい職場づくりとして活用できるでしょう。
また、サロンにおける業務の効率化では「POSシステムの導入」が効果的です。
なぜなら、POSシステムでは顧客情報の管理が一括で行えるため、予約情報の管理や状況に応じた人員確保などがしやすくなるという点からです。
まとめ
美容師の残業時間・残業代について解説しました。
労働環境の認識があいまいになりがちな美容業界において、労働基準法で守られるべき規定をしっかりと把握し、必要に応じては適切に請求することも大切です。
勤務時間外の業務や練習、ミーティングなどでも残業代が発生するケースがあります。
サロンオーナー、美容師ともに、正しい知識をもって労働環境を改善していくことは、今後も業界全体の大きな課題となっていくでしょう。
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