美容師の個人事業主で確定申告・税金|フリーランスの経費やインボイス制度
日本では約57万人いると言われている美容師の中で、フリーランス美容師の割合は全体の約16%を占めています。
新しい美容師の働き方として、今後も増え続けていく傾向にあるフリーランス。
「フリーランス美容師の収入や税金について知りたい」
「個人事業主になったら確定申告の手続きはどうする?」
「美容師にもインボイス制度って関係ある?」
このように美容師として独立する場合、個人事業主として知っておかなければならないやることがいくつかあります。
フリーランス美容師の収入に大きく影響を及ぼす、以下の内容について詳しく解説します。
- 美容師のフリーランスとは
- 個人事業主である美容師の収入・税金
- 個人事業主になるための手続き
- 確定申告は青色申告で節税対策
- フリーランス美容師におすすめの帳簿管理アプリ
- フリーランス美容師のメリット・デメリット
- インボイス制度の影響とやるべきこと
- 個人事業主の労災
今後フリーランスで独立したいけど、美容師としての末路が不安だ…という方は、今から個人事業主の実態をここで掴んでおきましょう。
この記事を書いた人
ナチュラルな大人可愛いから今時の可愛いまで、お客様に合わせたヘアデザインをご提案させて頂きます。
メンズ似合わせカットや、透明感カラーが得意です。またアイリストのディプロマ取得済み。現在は転職エージェントとしてサイト運営中。
美容師の個人事業主・フリーランスとは
フリーランス美容師とは、以下の働き方をする個人事業主のこと。
美容師の個人事業主・フリーランス
- 業務委託
- 面貸し
- シェアサロン
個人事業主の場合、職業欄にはなんて書く?
「自営業」または、その他を選択し詳細欄に「個人事業主」や「フリーランス」「自由業」と書きます。
業務委託
業務委託とは、事業者が自社の業務の一部を外部の事業者に委託することを指します。
サロン(委託元)とフリーランス美容師(委託先)の間で契約が成立し、特定の業務を委託先が受け持つ形態です。
出勤日数や勤務時間も自由に設定することができるサロンが多いので、育児や介護、副業等がある方でも無理なく働けるスタイル。
道具や薬剤はサロンのものを使うことがほとんどなので、初期費用は最小限にできるのが最大のメリットです。
面貸し
面貸し(めんかし)とは、サロン・店舗の一部スペースを、一定期間または一定の条件で借りて働く方法です。
サロンオーナーと美容師の関係性は、
店舗オーナーと利用者
という形態であるのが特徴。
そのため、サロンから報酬が支払われるのではなく、お客様から支払われる売上そのものが給与になります。
サロンの空席を貸してもらっているので、サロンには売上の一部を使用料として支払います。
ただし、面貸しは業務委託とは異なり、場所だけを借りているため備品等は自分で用意する必要があります。
集客も自分自身で行うため、費用・リスクを抑えつつ経営の経験が積めるのがメリット。
シェアサロン
シェアサロンとは、フリーランス美容師を対象に、お店という場をレンタルとして提供するサービスのこと。
場所を借りて営業するスタイルは似ていますが、サロン全体を使用できる自由度の高さは、より働きやすい環境と言えるでしょう。
利用料金は、
- 月額固定利用料
- 固定+歩合料
- 時間料
のいずれかを採用しているシェアサロンが一般的です。
面貸し同様、備品の用意や集客を自分で行う必要がありますが、リスクやコストを抑えて独立が可能に。
美容師には個人事業税がかかる
フリーランスとして独立した美容師は、「個人事業主」という扱いになるため、個人事業税がかかります。
個人事業主とは
法人を設立せず、個人で事業を営む人。
会社を設立せず、会社に雇用されていないこと。
手続き上では、税務署に開業届を提出し、事業開始の申請が必要。
フリーランス美容師が支払う税金の種類は次の通りです。
- 所得税
- 個人事業税
- 消費税
- 個人住民税
- 国民年金
- 国民健康保険
1,000万円以下であれば売上時の消費税分が免除されますが、インボイス制度導入後には消費税分の処理の仕方が変わってくるため注意が必要です。
年間所得に対して5%の税率
フリーランス美容師の場合、個人事業税の対象です。
個人事業税とは
個人が営む事業のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金。
現在、法定業種は70の業種があり、美容師も該当。
個人事業税は、年間所得に対して5%の税率が課せられます。
所得とは収入に対して経費を引いた純利益のこと。
また、個人住民税も所得税に応じて決まります。フリーランスの場合、確定申告に基づき各自治体から納付書が送られてくるため納期に応じて支払いましょう。
290万円以下の場合は非課税
個人事業税では、「事業主控除」として年間290万円の控除が認められており、法定業種でも事業所得額が290万円以下の場合は免除されます。
たとえ売上がこれを上回っていても、経費計上によって290万円を下回る場合があるため、経費の計算は漏れがないように行いましょう。
個人事業主である美容師の収入
美容師の平均年収は300万円が相場と言われています。
一方で個人事業主やフリーランスの相場は、100万円~500万円とかなり年収に幅があるようです。
理由は、フリーランスが自由に勤務時間を決めることができる点や、働く店舗の条件などによって収入も大きく変動する点からと考えられています。
全体的に言えることは、売上の約10~20%程度が実際の収入となる目安です。
個人事業主になるための必要な手続き
美容師が個人事業主として働く場合に、やるべき手続きは以下の4つ。
- 開業届、青色申告承認申請書の提出
- 開設届、美容所登録
- 国民健康保険への切替
- 国民年金への加入
開業届、青色申告承認申請書の提出
個人事業主として働く場合は、開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。
提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
開業届 | 税務署と各都道府県 |
|
青色申告承認申請書 | 税務署 |
|
開業届出さないとどうなる?
開業届を提出せずに収入を得ていても、特に罰則はありません。
ただし、「青色申告が出来ない」「屋号での口座開設ができない」「補助金・助成金の申請ができない」などデメリットが発生します。
手続きに関しては、国税庁のサイトに掲載されているe-Taxでパソコンからから申請することができ、税務署に行って直接教えてもらう事もできます。
開設届、美容所登録
個人事業主として店舗を構える場合は美容所登録が必要です。
保健所へ開設届を提出し、構造設備等に問題がなければ美容所登録が完了します。
美容所登録 | 詳細 |
登録届出先 | 出店地域を管轄している保健所 |
費用 | 20,000円前後(地域により異なる) |
届出期間 | オープンの1週間から10日前まで |
必要書類 |
|
国民健康保険への切り替え
退職した美容室で社会保険に加入していた場合は、退職日の翌日から14日以内に国民健康保険に切り替える必要があります。
手続きは、住民票のある市町村窓口で行います。
持ち物
- 印鑑
- 本人確認書類
- 加入していた健康保険の資格喪失証明書
国民年金への加入
サロンで雇用されている場合、給料から天引きされていた年金保険料。
フリーランスになると、退職後14日以内に国民年金に加入する必要があります。
こちらの手続きも、住民票のある市町村で行います。
持ち物
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 年金手帳、または基礎年金番号通知書
- 離職年月日が確認できる書類(厚生年金資格喪失証明書・雇用保険受給資格者証・雇用保険被保険者離職票、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書等の写し等)
確定申告は青色申告で節税対策!
確定申告には以下のように2種類あります。
- 青色申告
- 白色申告
節税を考えるなら、青色申告がオススメです。
なぜなら4つのメリットがあるからです。
青色申告のメリット
- 最大65万円の所得控除
- 赤字の繰り越しが3年間可能
- 家族への給与が全額必要経費にできる(青色事業専従者給与)
- 減価償却資産(30万円未満)は一括経費
反対にデメリットとしては、白色申告と比較してやや手続きに手間がかかるという点が挙げられます。
青色申告の書き方
引用元:国税庁
青色申告の書類と書き方については、国税庁の「所得税の青色申告承認申請書」をダウンロードして、必要項目に記入するだけでOKです。
経費で落とせる項目
経費の定義は「収益を得る目的で使用した費用」とされています。
フリーランスの美容師が確定申告の際に、経費で落とせるものは以下の内容です。
経費の内訳 | 内容 |
固定費 |
|
その他の経費 |
|
所得税控除の種類
所得税には様々な控除があり、合計額から差し引いて計算することで、税負担を軽減できます。
控除の種類は以下の通りです。
- 基礎控除
- 雑損控除
- 社会保険料控除
- 医療費控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
フリーランス美容師は確定申告の前に控除の種類を確かめておきましょう。
控除は15種類もあって、条件などによって適用されるものが変わってくるものだからです。
>>美容師売り上げ100万と50万の給料では、美容室やフリーランス美容師の平均年収を解説。
フリーランス美容師におすすめ!帳簿管理アプリ
フリーランスとして美容師の業務をこしながら帳簿を管理するのは多大な手間と時間を要します。
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フリーランス美容師のメリット・デメリット
フリーランス美容師として働くうえでのメリットとデメリットを比較してみてみましょう。
個人事業主として、美容師がフリーで働く場合には魅力的なメリットが多くありますが、必ずデメリットもいくつか存在します。
それは、主に以下の内容です。
メリット | デメリット |
|
|
デメリット
フリーランスでは自由度が高い分、収入が安定しにくいという不安要素があります。
会社員と比較すると、基本給やボーナス、有休もありません。
当然、厚生年金や健康保険などの保証も受けられないので自分で賄わなければなりません。
他にも、売上の管理や確定申告の手続きなど全て把握してこなす必要があります。
また、社会的信用度も低いとみなされてしまう傾向もあるでしょう。
例えばローンを組む、クレジットカードを発行する、物件の賃貸などの取引において不利になることもあり得るということです。
ただし、事前にこれらのデメリットを知っておくことで、リスク管理ができ、備えることもできます。
メリット
フリーランスとして働く魅力は、自分次第でステップアップが実現できるという点です。
理由は、やり方次第で雇用されている時と比較して収入アップも期待できるからです。
また、スケジュール管理も自由に組み立てることができ、時間を有効活用できるため働き方の自由度が高いでしょう。
人によっては、サロンでの人間関係に悩まされなくて済むといった利点も挙げられます。
そのため仕事に集中できるというのがメリットと言えます。
メリット・デメリットについては>>美容師のフリーランスとは?でも詳しく解説しているので併せてご覧ください。
美容師に関わるインボイス制度の影響
結論から言うと、「インボイス制度」は美容師にも影響を及ぼします。
インボイス制度の特徴は、消費税の処理方法が変更されるという部分です。
そもそもインボイス制度とは、2023年10月1日から導入される仕入税額控除を受けるための制度。複数税率となった消費税の仕入税額控除の金額を正しく計算する方式。
正式名称では「適格請求書等保存方式」、記載義務を満たす請求書により、消費税を計算して納付します。
記載義務の要件
- 取引年月日
- 的確請求書発行の事業者の氏名または名称・登録番号
- 書類の交付を受ける側の氏名または名称
- 取引内容
- 適用税率と対価の額
- 消費税額
適格請求書の発行による仕入税額控除
課税事業者でなければ適格請求書(インボイス)の発行ができず、インボイスではない請求書だと仕入税額控除ができません。
課税事業者は、国に対して消費税を納める義務がある一方で、免税事業者はその義務がありません。
現在、以下の場合は免税事業者とし、消費税分が利益としてもらえています。
- 事業開始から2年未満
- 年間売上1,000万円未満
業務委託契約だと収入が下がる可能性
インボイス制度で影響を受けるのは、年収1,000万円以下に該当する免税事業者の美容師の方です。
フリーランス美容師として、掛け持ちで業務委託や面貸しなどで収入を得ている方もいるでしょう。
中でも業務委託契約の場合、収入が減る可能性があるのが現実です。
なぜなら、契約している美容院の方針に左右されてしまうからです。
例えば、免税事業者のまま報酬が消費税分下がるといったケースでは、受け取る報酬が減ってしまいます。
いちばん理想的なのは、免税事業者のまま報酬は変わらないというケースが望ましいでしょう。
取引先である業務委託美容室から、適格請求書(インボイス)の発行を求められずに、その分の報酬も引かないで消費税分を負担してくれる方針である場合です。
インボイス制度でフリーランス美容師がやるべきこと
インボイス制度において、美容師がやるべきことは以下の3つが挙げられます。
- 適格請求書発行事業者の登録申請をする
- 免税事業者である美容室と契約する
- 雇用契約も視野に入れる
フリーランスとしての働き方や契約しているサロンの方針などを踏まえて、自分にとってベストな方法を選ぶことが大切です。
適格請求書発行事業者の登録申請をする
適格請求書(インボイス)の発行は前述のとおり、税務署へ登録申請が必要となります。
取引先の美容室に求められた場合、事前に申請しておくとスムーズです。
免税事業者である美容室と契約する
取引先の美容室が免税事業者であれば、インボイス発行は不要です。
そのため、免税事業者のサロンと業務委託契約を結ぶようにするという方法もあります。
雇用契約も視野に入れる
自営業の個人事業主としてではなく、美容室の従業員として雇用契約を結ぶのも選択肢のひとつです。
業務委託の場合、取引先の美容室で働いた分の報酬を受け取るためには請求書が必要となります。
その点から考えると、直接雇用によって請求書を発行する必要がなくなります。
個人事業主が労災保険給付を受けるには
労災保険は労働者の保護を目的としているため、事業主は労災保険の対象とはなりません。
ただ、美容室の経営者であるオーナーの場合、美容師としてお店で働いているケースも多くあります。
フリーランス美容師として働いている個人事業主も同様です。
そのため、従業員と同じく通勤時や仕事中に災害に遭う危険性があるといえますね。
通常は労災保険の対象とならない「事業主も労災保険の対象になる制度」についてご紹介します。
特別加入制度
特別加入制度を利用することで、個人経営の事業主を労災保険の対象となることができます。
特別加入のメリット
労災保険に特別加入することにより、仕事中・通勤中のケガ、病気、障害、死亡等に対して補償が受けられます。
給付内容
労災保険給付では、ケガ等の治療に必要な給付や、休業する際の休業期間の給付、治療後に障害が残った場合の給付、お亡くなりになった場合の遺族への給付等が支給されます。
対象
フリーランスの場合は以下に該当する方が対象となります。
- フリーランスが企業等から業務委託を受けて行う事業
- フリーランスが消費者から委託を受けて行う特定受託偉業と同種の事業
労災保険制度・特別加入制度について詳しくは、以下の厚生労働省ホームページでご確認ください。
まとめ
今回は、フリー ランス美容師の働き方や、美容師が個人事業主として働くうえでのメリット・デメリットや確定申告の手続き、個人事業主としての労災などについて解説しました。
フリー ランス美容師は個人事業主として、業務と並行しながらも、帳簿管理から確定申告まで様々な役割をこなしていかなければなりません。
また、今後導入されるインボイス制度についても影響を受ける可能性があります。
今後、個人事業主としての働き方を選択するならば、必要な知識を持つことでリスク回避にもつながり、今後のさらなる活動に生かすことができるでしょう。
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