美容師の勤務時間と残業代|美容室の休憩時間や休日は労働基準法違反?

美容師の仕事は華やかに見える一方で、「仕事時間が長い」「休憩が取れない」「残業代が出ない」といった悩みも多く聞かれます。
実際、美容室の中には“慣習的な働き方”が続いている職場もあり、「労働基準法に違反しているのでは?」と感じる人も少なくありません。
本記事では、美容師の労働時間の平均・残業の扱い・休憩や休日の基準を労働基準法の観点から解説します。
さらに、美容室が注意すべき労務管理のポイントや、働く側が自分の権利を守るためのチェック項目も紹介します。

「業界だから仕方ない」と諦める前に、法律上どこまでが適正なのかを正しく理解しましょう。


監修者 — 京極琉
京極琉は「世界一のヘアデザイナー」と称され、数々の国際的な美容賞を受賞した実力派。日本の高級ヘアブランド「KYOGOKU」の創設者であり、アジアにおいて非常に高い影響力を持っています。セレブリティ、有名人、スーパーモデル、企業家などのヘアスタイルを手がけ、無数の人々にとって理想のイメージを実現してきました。
パリ・ミラノ・東京コレクションでは公式ヘアディレクターを務め、世界各国でプロ向けの美容技術セミナーにも招かれるなど、
その指導のもとアジアで10万人以上の美容師が一流の技術を学び、「京極琉ヘアデザイン」は世界的なトレンドとなっています。
「完璧なヘアスタイルとは、見た目の変化にとどまらず、自信とセンスを高める鍵である。」—— 京極琉
彼の理念は、美容技術を通して一人ひとりが「最も美しい自分」を表現できるようにすること。現在は日本最高峰のヘアケア技術を台湾市場にも導入し、より多くの台湾の方々にプロレベルの美容体験を提供しています。
【これまでの実績】
・世界的に認められた「世界一のヘアデザイナー」
・日本のトップヘアブランド「KYOGOKU」創設者
・アジアで最も人気のあるヘアアーティストであり、10万人以上のプロ美容師を指導
美容師の勤務時間|1日7〜8時間以内


働かされすぎで法律違反レベルでは?
美容師には労働基準法はない?
もちろん美容師の働く時間も労働基準法によって守られています。
基本的に美容師の一週間の勤務時間は労働基準法で決められている「1日8時間、週40時間」の中で働くことになるからです。
就職情報提供サイトのjob tagによれば、美容師の平均勤務時間は月に173時間(1日7〜8時間)との調査結果が報告がされています。
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査の結果」
美容師の業務内容は施術以外にも


美容師のお仕事は、お客様をお迎えしてキレイにしてお見送りするこの一連の流れがメインの業務になります。
アシスタントはスタイリストがスムーズに業務に集中できるようにあらゆる面で臨機応変にサポートをしていくのでとても重要な役割でもあるのです。
スタイリストの業務内容としては店舗によっても差はありますが、主に以下のような業務を毎日こなしていきます。
業務内容
- カット
- カラー
- パーマ
- ヘアセット
- 営業前、後の掃除
- カルテなど顧客管理
- 売上の集計やレジ締め
>>美容師の一日の流れでは具体的な「美容師一日のスケジュール」を解説。サービス残業やシフト制など、美容師のリアルな労働環境を垣間見れます。
カット・カラー・パーマ・ヘアセット
スタイリストの仕事はお客様1人1人をしっかりとカウンセリングした上で、要望に合わせたカットやカラーなど技術を提供し喜んでいただけるように努めていきます。
1対1でゆっくりと時間をかけて向き合える店舗もあれば、多いと5〜6人掛け持ちしながらアシスタントと連携を取りながら対応しなければならない店舗もあるので忙しさは人それぞれとなります。



スタイリストが忙しいとカットと仕上げ以外はアシスタントがほとんど施術しなくてはならないケースも多いので技術力やトーク力、柔軟な対応ができるアシスタントは重宝されます。
営業前後の掃除
掃除はアシスタントがメインでやることが多いのですが、人数の少ない店舗などではスタイリストも同様に掃除作業を行います。
朝礼をしてオープンまでの時間で鏡や床、シャンプー台などキレイにしてお客様をお迎えする準備を行い、夜には全体掃除をして次の日の営業に向けて、シャンプークロスを洗いタオルを洗い干す作業を行います。
カルテ・顧客管理
1日に担当したお客様の施術した薬剤やカットの内容、お話した内容など次回ご来店頂いた際に役立つ情報をカルテに記入していきます。
前回の内容など覚えていたらやはり嬉しいものですし、そういった地道なひと手間が再来にも繋がっていくのでとても重要な作業になります。
売上の集計やレジ締め
個人や店舗の売上や店販売上やメニューのランクアップにもノルマや目標が設定されているケースが多く、毎日集計して項目ごとに意識しながら定期的に見直していきます。
1日の売上を集計しながらレジ金があっているか打ち忘れはないかなどの確認業務を最後にします。
美容師が勤務時間外にすること


お客様に対しての接客や施術は営業時間内でのお仕事となり、営業外ではまた違った業務をしていきます。
営業外に発生する業務
- 技術力向上の為の練習指導
- ミーティング(店舗全体、スタイリスト、幹部)
- 講習会
- モデル練習
- 撮影会
- SNS更新やDM対応
技術向上の為の練習指導
専門学校を卒業したばかりのアシスタントの場合ほとんど何もできません。
シャンプーからはじまりカラー、パーマ、カット、セットといくつもの技術を1から習得しなければならない為、基本的に朝、晩と営業時間外で練習していきます。



スタイリストは練習を教えてあげたりモデルとなって指導しなくてはならないので営業時間が終わってもすぐには帰れない事が多いです。
スタイリストもアシスタントが色々な技術を覚えてくれると、任せられる業務の幅も増えるので早く成長できるように指導していきます。
ミーティング(店舗全体・スタイリスト・幹部)
ミーティングに関しても店舗全体の売上やキャンペーンや改善点などについての話し合いがあります。
スタイリストだけでアシスタントをどう指導していくかや、集客などについてのミーティングを別に行い、会社の規模が大きいと幹部のみのミーティングがあったりと多様です。
月に何度も行われる事もあり、なかなか断ることも難しい為、昇格するほど自由な時間が減る傾向にあります。
講習会・モデル練習・撮影会
お休みの日や営業後に講習会が入ることも珍しくはなく、新しい知識を得られる一方でプライベートな時間を削らなければなりません。
お店のホームページやSNSに使う写真などをモデルさんを呼んで定期的に撮影会をしたり友達などをモデルとして呼び、新しい技術に挑戦したりと常に最新のスタイルを取り入れ成長をしていきます。
近年では、SNSの普及により個人で集客する場面もかなり増えました。
そのため、SNSの更新を頻繁に行ったり、予約や問い合わせに個人で対応しなければならない事も増えているのが現状です。



このように営業外での業務の多さが美容業界はブラックと言われる理由の一つなのかもしれません。
美容師あるある|サービス残業


美容師は昔からカット練習と言われる半強制的な営業外の練習を強いられてきました。
自分が成長する為と言われて断れず長い1日の営業時間の前後で毎日練習して自分の時間も確保できず残業代もでない、そんな環境でした。
この風習のせいで美容業界=ブラックな業界と広まってしまいましたが、近年ではかなり改善されつつあり練習時間にも残業代がつくようになってきています。
また営業時間内に練習時間を確保してくれる美容室も増えてきており、大手ですと学校のように店舗以外の場所を借りてセミナーを行ったりと教育に力を入れている所も多くなりました。
営業時間内に練習ができる為、時間の余裕も得られやすくなりモチベーションも保てます。
頑張って働く労働者として残業代は正当な権利でもあるのです。
もし残業代を貰えないような環境ならば自分で交渉して権利があることをしっかりと主張していくことがとても大切になってきます。
>>美容師の残業代がでないでは、未払いの残業代の請求方法について解説。
労働基準法違反になる可能性も
このように勤務するサロンによっては、土日出勤しなくていけなかったり、タイムカードを押してから技術練習・ミーティングが行われて給料が発生しないといったケースが完全に無くなってはいません。
これは労働基準法違反に該当しますか?
- 「参加が義務」とされる技術練習
- 店長や先輩が指導する練習
- ミーティング・清掃など勤務関連の活動
これらは勤務時間に含まれるため、タイムカードを押した後で行われても、賃金を支払わなければ労働基準法違反に該当する可能性が高いです。
参考:労働基準法第32条
雇用契約内容などによっても状況が異なるため確認が必要になります。
36協定を結ばないと違法
36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づき、「法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせる場合」に会社と労働者代表が締結し、労働基準監督署へ届け出る必要がある協定のことです。
つまり、36協定がないのに残業させるのは、法律違反になります。
状況 | 違法か合法か | 詳細 |
---|---|---|
36協定を結ばずに残業させている | 違法 | 労働時間超過はできない |
みんな頑張ってるから残業して当たり前 | 違法 | 同意があっても協定がなければ無効 |
36協定はあるが内容が曖昧 | 要注意 | 残業の上限時間を超えると違反になる |
36協定+特別条項付き (臨時対応用) | 合法 (条件あり) | 年6回までの上限超過が可能だが届出必須 |
美容室では「営業時間終了後の片付け・練習・ミーティング」が残業になりやすいですが、
それが業務命令にあたる場合は36協定の対象です。
経営者・オーナーが行うべき対応
- 労働者代表と正式に協定を締結する
- 内容(時間上限・期間・対象業務など)を文書化する
- 労働基準監督署へ届出(毎年更新)
- スタッフ全員に内容を周知する
これを怠ると、監督署の是正勧告・罰則・助成金停止などに発展する場合もあります。
就職時のサロン選びの重要性がここで明確にわかりますね。
美容師の勤務時間や残業時間は環境次第
美容師だからではなく、どんな業界でもブラックな企業とホワイトな企業があります。



今の職場があまりにもブラック体質で改善する余地がないのでしたら、より良い環境へ変える為にも、転職を考えるのも一つの手段かもしれません。
その環境を我慢して過ごしていくよりも、良い条件で気持ちよく働けるほうが気持ちもやる気もアップしますね。
今の環境を変えたい方におすすめ「JOB VR」
次の就職先ではブラック企業に当たらないためにもしっかりと見極めてから入社したいですよね。
そこでおすすめしたいのが「JOB VR」です。
- 優良店が多く搭載されている
- 就職後の働き方がイメージしやすい
などの特徴があります。
美容室と求人を探している美容師を繋いでくれるマッチングサービスで実際に働いてみたりもできるのでお店の雰囲気も掴みやすく転職にうまく利用すると便利です。




美容師の勤務時間に関するQ&A


美容師の勤務時間や残業に関してよくある疑問にお答えします。
- 美容師の勤務時間は何時から何時まで?
-
通常は10〜11時オープンのお店がほとんどなので、その1時間前出勤などが一般的です。
ただ、アシスタントはそれよりも早く出勤するケースもあり、実際に仕事終わる時間は働くサロンや個人差によって大幅に変わってきます。
- 勤務体制や勤務条件は働く前に確認できる?
-
サロンの勤務形態や労働条件については、求人内容や面接時に年間休日など具体的な数字を確認することが可能です。
とはいえ働く前から勤務実態について掴むことは困難といえるため、情報収集と慎重な判断力が必要です。
- 8時間労働で休憩時間はどのくらい取れる?
-
本来は1時間の休憩が必須ですが、現場の状況次第ではほとんど取れずに10時間労働していた、なんてケースもあり得るといわれる業界です。
勤務時間帯や混雑時のスタッフとの連携により、休憩時間も大幅に左右される働き方です。
- 美容師の働き方と生活の「ライフワークバランス」は?
-
ハードな生活リズムであると体感しているアシスタント・スタイリストがほとんどといった印象です。
趣味などプライベート時間を充実させるために独立する美容師も多いのが現状ともいえます。
- 土日休みは可能?
-
休日はサロンによってシフト制や固定など様々です。
土・日曜日に休みたい場合は前もって相談するなど臨機応変に対応してくれるケースもあれば、基本的にNGであるサロンもあります。
- 「休憩ない」・「有給ない」のが業界での常識?
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一部そういった感覚を持つサロン経営者がいるのも事実ですが、昨今では労働環境の改善に意識を向けている風潮があります。
以下は美容室における「休憩・有給」に関する労働基準法との比較表なので参考にしてください。
スクロールできます項目 業界でよくある実態 労働基準法上の正しい扱い 違反リスク 改善・対策ポイント 休憩時間 「お客様がいない時間を休憩にしている」
「実質ほぼ取れない」労働時間が6時間超
→45分以上
8時間超
→1時間以上の休憩が必須。
完全に業務から解放されている必要あり(第34条)。労働基準法第34条違反。
是正勧告・罰金・労使トラブルの原因になる。予約枠を調整し休憩時間を確保。
業務中の電話番・待機は「休憩」と認められない点を共有。有給休暇 「忙しい時期は取れない」
「欠勤扱いになる」
「新人は取れない」6か月勤務+出勤率8割以上で10日以上付与。
使用者は年5日以上の取得を義務付け(第39条)。労働基準法第39条違反。
年5日未取得は企業側に罰則(30万円以下の罰金)。シフト作成時に計画的付与。有給申請の書面化・管理表の整備。
取得を理由に評価を下げてはいけない。
また、サロン内トラブルでの「引き抜き・競業避止義務違反」「パワハラで訴える」などの声については>>美容室のオーナーを訴えたいで詳しく解説しています。
まとめ:美容師の勤務時間と休日は美容室によって違う
美容師の勤務時間や休憩、残業代は、一般企業と同じく労働基準法の対象です。
1日8時間・週40時間を超える労働には残業代の支払い義務があり、6時間を超える勤務では少なくとも45分の休憩を取る必要があります。
「業界の常識」はあっても、「法律の例外」は存在しません。
サロン経営者は正しい労務管理を徹底することでスタッフの定着率が上がり、結果的に生産性も向上します。
働く美容師も、自分の働く環境を“努力”ではなく“制度”で守る視点を持つことが大切です。



多忙であっても”健全な労働環境”こそが、美容業界全体の信頼を高める第一歩です。