美容師の育休・産休|妊娠したら?取得期間から復帰までお金がもらえる方法

育休・産休について不安を抱えているママ美容師さんはたくさんいます。
なぜなら、収入減・職場復帰のハードル・接客や立ち仕事の難しさなどが大きな要因となってくるからです。
美容師の給与では歩合制が多い点から、産休・育休明けで復帰しても失客しているリスクもあり、元の売上に戻すのが難しいことが悩みの種。
また美容師は、長時間労働や土日勤務が多く、育児との両立が難しいため、復帰後の働き方に不安を感じるママ美容師が多いのです。
まずは、美容師でも育児休業が取得できたり、出産手当金や出産育児一時金などが受け取れるということを知っておきましょう。
ここでは、美容師さんが妊娠したら知っておくべき「出産・育児でお金がもらえる方法」や「育休期間」についてわかりやすくご紹介します。
安心して産休・育休に入るための「お店で準備すること」もチェックしましょう。

少しでも不安を取り除けるよう情報収集して、お子さまとの貴重な時間を大切にお過ごしくださいね。


この記事を書いた人
ナチュラルな大人可愛いから今時の可愛いまで、お客様に合わせたヘアデザインをご提案させて頂きます。
メンズ似合わせカットや、透明感カラーが得意です。またアイリストのディプロマ取得済み。現在は転職エージェントとしてサイト運営中。
妊娠したら知っておくべき給付金制度一覧


まずは、妊娠・出産・育児をこれから迎えることになる方に知っておいてもらいたい給付金を一覧にまとめました。
以下のとおり、出産から養育まで様々な支援制度が、国や自治体によって設けられています。
制度・給付金名 | 支給額 | 申請先(手続き) | 申請条件 |
---|---|---|---|
出産育児一時金 | 1児につき50万円(健康保険組合によって異なる場合あり) | 健康保険・国民健康保険 | 出産後、健康保険組合または自治体へ申請 |
出産手当金 | 給与の約2/3 × 産休日数 | 健康保険(勤務先) | 産休取得者(勤務中で健康保険加入者) |
出産・子育て応援事業 | クーポン・ギフト券等 妊娠時:妊婦1人あたり5万円相当 出産後:児童1人当たり10万円相当 | 市区町村・自治体 | 妊娠時に市区町村・自治体へ申請 |
育児休業給付金 | 休業開始から180日目までは給与の67%、その後50% | ハローワーク(勤務先経由で申請) | 雇用保険に1年以上加入、育休取得 |
児童手当 | 0~3歳:月15,000円 3歳~中学生:月10,000円(所得制限あり) | 市区町村・自治体 | 出生後に市区町村・自治体へ申請 |
出産祝い金(自治体ごと) | 自治体により異なる(例:東京都港区10万円) | 市区町村・自治体 | 条件は自治体により異なる |
小児医療費助成 | 自治体による(無料または一定額負担) | 市区町村・自治体 | 0歳~高校生まで対象の自治体が多い |
高等教育の修学支援新制度 | 授業料減免+給付型奨学金 | 日本学生支援機構(JASSO) | 住民税非課税世帯またはそれに準じる世帯 |
>>【美容師の結婚】結婚相手やタイミングでは、美容師の年収や将来性について解説しています。
妊娠したら区市町村の窓口に届出を!
妊娠がわかったら、お住まいの区市町村の窓口へ「妊娠届」を出します。
- 母子健康手帳の交付
- 妊婦健診受診券
- 子育て関連用品に使用できるクーポン券等
- 保健師等による相談
- 母親学級・両親学級の紹介
などを受けることができます。



妊娠や出産に関する悩みは、お住まいの区市町村の保健センターで相談することもできます。
>>美容師の妊娠初期は?でも、妊娠したらするべきこと、妊婦美容師さんの産休について解説しています。
美容師の産休期間


美容師に関わらず、全てのママさんが取得できる産休期間は98日間です。
これは産む前の妊娠中に休める42日と、出産後の56日を合わせた日数になっています。
美容師さんの産休はどうするのか…。
まずは勤務先のサロンオーナーと上司への報告です。妊娠していること、出産予定日、出産後も働きたいかどうかの意思を伝えます。
そのうえで妊娠中の働き方や休業予定を相談し、自分でする手続き、会社側での必要な手続きをそれぞれ確認しておきましょう。
ちなみに、職場へ報告するタイミングは安定期に入る妊娠16週以降が一般的です。
産前休業は出産予定日の6週間前から(双子以上は14週間前)


産休とは、産前・産後にそれぞれ分けて日数が設けられています。
産前休業は出産予定日6週間前から取得でき、双子以上の場合だと14週間前からの取得が可能です。
産後休業は出産日の翌日から8週間
一方、産後休業は出産翌日から8週間と定められています。
産後8週間以降も休業したい場合は、育児休業を取得することになります。
出産日によって異なるものなので、産休・育休はいつからかが明確にわかる自動計算・シュミレーターなどを活用するといいでしょう。
職場復帰は産後6週間以降


前述では、産後8週間までは休むことが原則であることをお伝えしました。
ただし、それよりも早く復帰して働きたい場合は、本人の意思のもと、医師が支障ないことを認めた業務に関しては就業することができます。
そのため強制的休業期間は、産後6週間とされています。
美容師が出産時にもらえるお金


出産によって給付される制度には、「出産手当金」「出産育児一時金」があります。
出産育児一時金は日本で健康保険に入っていれば出産時に誰でも受給できますが、出産手当金は健康保険の加入先によって支給額や支給の有無が変わってきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
>>美容国保と社会保険・国民健康保険では、フリーランス・個人事業主の美容師向け保険について紹介。
出産手当金:健康保険の加入先による
出産手当金とは、出産で仕事を休んだ期間を対象に健康保険から支給される産休手当のこと。
出産手当金支給の対象者
- 勤務先で健康保険に加入
- 妊娠4か月(85日)以降の出産
- 出産のため休業・給与支給なし
加入している健康保険によって支給額が多い、少ないは異なりますが、国民健康保険にはそもそも「出産手当金」という制度がないため、国民健康保険の加入者の場合は対象外となります。
例えば、美容国保では出産手当金(現金給付)として、1日につき5,000円・30日分となる150,000円が支給されることになっています。
出産育児一時金:50万円
出産育児一時金とは、健康保険や国民健康保険に加入していることで手当金が支給される制度です。
妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度対象でない出産の場合は、支給額が48.8万円となります。
妊娠4か月(12週・85日)以上の分娩は、生産、死産にかかわらず支給され、出産費の窓口負担を軽減するしくみとして「直接支払制度」または「受取代理制度」が利用できるなど、支給される方法について詳しくは加入先の健康保険・国民健康保険によって確認が必要です。
美容師の育休期間


もしかしたら、働いている美容室によっては人手不足で育休を取らせてもらえない、なんて方もいるかもしれません。
当然ながら、美容師も育児休暇の取得は可能です。
育休取得は健康保険法・雇用保険法で定められている権利であり、美容師に限らず誰でも受けとることができる制度だからです。
具体的に育児休暇はどのくらい取れて、ママだけでなくパパも取得する方法などを見ていきましょう。
原則こどもが1歳まで(最長2歳まで)


育児休業とは、原則1歳未満のこどもを養育するために休業できる制度です。保育所に入れない場合は申し出により、1歳6か月〜2歳まで延長することができます。
仮に、働いているお店の就業規則に育児休業に関する規定がなくても、法律に基づき育児休業の取得が可能なため、お店側は休業の申し出を拒むことはできません。
原則、申請は会社が行いますが、本人が希望することで
また、産前休業と異なり、産後の育児休業は男性も取得することができます。
パパ・ママ育休プラスなら1歳2か月まで


パパ・ママ育休プラスとは、夫婦が育児休業取得のタイミングをずらせる制度で、通常よりも2か月長く休業できるのがメリットです。
産後パパ育休(出生時育児休業)
- 子どもが生まれて8週間以内に4週間休める
- 2回に分割して取得できる
男性が育児休業を取得することによって、女性が産後も働き続けられる体制を整えることが目的とされています。



復帰後の働き方では、時短勤務やパート勤務に切り替える人も多いです。
>>ママ美容師の悩みでは、育児と子育ての両立を実現する働き方選びについて紹介。女性美容師の独立・サロン経営についてご覧いただけます。
美容師が育休中にもらえるお金


育休手当としてもらえるお金は「育児休業給付金」です。
雇用保険への加入、育休取得時の申請が必要となります。
従業員から育児休業の申し出があった場合は、事業主が拒否することはできないのが前提。
申請手続は事業主経由で行うことが原則となりますが、給付金そのものは雇用保険(国)から支給されるので、事業主の負担はありません。



被保険者が希望する場合、本人で申請手続を行うことも可能です。
育児休業給付金の計算式


育児給付金の支給額は以下の計算式で算出されます。
育休取得後の半年以降では、賃金日額17%減の50%が受け取れます。
項目 | 育休開始日〜6か月間 | 6か月以降 |
---|---|---|
計算式 | 賃金日額×支給日数×67% | 賃金日額×支給日数×50% |
上限額 | 315,369円 | 235,350円 |
賃金日額とは
育休開始直前の6ヶ月間の給与÷180日
産休・育休中に免除されるお金


産休・育休中では、給付金以外にも免除されるお金があります。
それは主に以下のとおりです。
- 社会保険料
- 国民年金保険料
- 雇用保険料
社会保険料
産休・育休中は、健康保険・厚生年金保険が免除されます。
免除期間では、加入期間としてカウントされるため、将来の年金額には影響がありません。
対象者
企業の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している従業員
免除期間
- 産前42日(双子以上は98日)+ 産後56日(産休期間)
- 育休取得開始から復職前日まで(育休期間)
国民年金保険料
国民年金保険料の産前産後期間の免除制度というものがあります。
住民登録している市区役所・町村役場の国民年金担当窓口へ、出産予定日の6か月前から届出できです。
対象者
個人事業主・フリーランスの美容師で国民年金に加入している方
免除期間
出産予定日または出産月の前月から4か月間。(多胎妊娠の場合は6か月間)
雇用保険料
産前産後休業中と育児休暇取得中では、雇用保険料も免除されます。
雇用保険は、支給された給与に対してかかるものだからです。産休・育休中は給与が発生しないので雇用保険料も同様に発生しません。
対象者
雇用保険に加入している方
免除期間
- 産前42日(双子以上は98日)+ 産後56日(産休期間)
- 育休取得開始から復職前日まで(育休期間)
安心して産休・育休に入るための事前準備


美容院で産休・育休をとる際には、スタッフやお客様へ迷惑をかけないよう事前準備が大切ですね。
以下の手配をきちんとしておくことで、復帰後の仕事がスムーズに始められます。
- 担当しているお客様への挨拶
- サロンスタッフへの引き継ぎ
仕事と家庭の両立支援を助成してくれる両立支援金について解説した>>美容師の助成金・補助金も参考にご覧ください。
担当しているお客様への挨拶
産休前・育休明けの挨拶は欠かせません。
- 産休明けで指名がなくなってしまった…
- 固定客が離れてしまった…
こうならないためにも、大切なお客様へは「いつからいつまで休業するのか」をお伝えします。
挨拶のポイント
産休・育休に入ることの報告
→ 「〇月〇日より産休・育休をいただくことになりました。」
これまでの感謝の気持ちを伝える
→ 「いつもご来店いただき、本当にありがとうございます。」
お客様への影響を考慮し、代替案を提示
→ 「復帰までは〇〇(別のスタッフ)をご紹介させていただきます。」
復帰予定があれば伝える(確定していない場合は「またお知らせします」とする)
→ 「〇〇頃に復帰を予定しておりますので、その際はまたご案内させていただきます。」
前向きなメッセージで締める
→ 「またお会いできる日を楽しみにしております。」
産休・育休のお知らせ例文や書き方は>>美容師の妊娠初期は?でチェックしてみてくださいね。
ハガキの他にも、公式LINE・SNS・DMなどで報告するのもいいですね。
誠意を持ってお伝えすることで、お客様も気持ちよく応援してくれますよ。



信頼関係を大切に、復帰後のスタートをスムーズにできるよう丁寧で前向きなメッセージを伝えましょう。
サロンスタッフへの引き継ぎ
産休・育休後に不明点がないよう、お店のスタッフへしっかりと引き継ぎを行うのもマストです。
お客様の施術履歴やスタイリング、髪の状態などは、サロンで共有できるカルテに管理しているケースがほとんどでしょう。
接客中に把握してあるお客様のファッションやメイク、趣味、好きなもの、仕事、家族構成などの情報も日頃からまとめておけるといいでね。
お客様のご意向を尊重できる丁寧な配慮が失客防止に繋がります。
>>美容師失客ショックで悲しいでは、美容院の常連さんが来なくなる事例や、原因と対策を解説。
まとめ
美容師の産休育休について解説してきました。
使える制度はしっかりと把握して申請しておくことが大事です。
これまでは産休・育休に対応できない環境が多かった美容業界。
近年では、こうした取り組みを積極的に行なっているサロンも増えてきています。
それは、出産・育児で美容師という職業を断念せざるを得ない人材を雇用し続けることが必要になってきたという背景があるからです。
美容師免許を持ちながら働けないママ美容師と、人材不足に悩むサロン経営者。双方のギャップを埋めるためには働きやすい環境づくりがカギに。
育休・産休制度や時短勤務、柔軟なシフト制度など、ママ美容師が笑顔で働けるサロンがスタンダードになることを願っています。